ジェラシーを彷徨わせて
……手で顔を隠したいのに。
この男、控えめにゆる〜く背中に回した片腕で拘束してくるから、為す術がない。凪は器量もよくて基本的になんでもこなしてしまうけど、なんこんなとこまで器用なの……。
「いつもよりも、ちょっとでもか、かわ……いく、見えるかなって、思っただけ、……だから、凪のためじゃない」
セリフを頭の中で反芻してみて、自分がおかしいことを言ってることはわかっていたけど、今更後戻りもできないし、凪に対してきゅうに素直になるなんて、ハードルが高すぎる。
「ふ、はは。……ん、そーね違う違う」
「っ、わらわないで………!ちがうの、ほんとに……じ、自分のためなの。凪がわたしのことかわいいって思ったら、うれしくなって、それで……自己肯定感があがるから……(?)」
…………自己肯定感って、なんだっけ……。
掴みどころのない熱に浮かされて、じわじわと温度を帯びていく頬と指先。すると不意に、耳にかけていた髪に指先が絡められて、つめたい爪先が肌を掠めた。