大江戸ガーディアンズ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


「——『南北の奉行所が手を取り合って』でござるか……」

杉山がとまどうのも無理はない。

江戸の町奉行所には「北町奉行所」と「南町奉行所」が設けられているが、月替りで交互に御役目にあたる「月番」になっている。

もし奉行所が一つきりだと、どうしても偏りが生じたり、手心を加えてもらいたい(やから)からの付け届けが横行したりするなど御役目が歪められてしまう恐れがあるためだ。

にもかかわらず、此度の件では取り決めに反して諸共(もろとも)に捕物にあたるとは——


「南町奉行所・年番方与力の御役目を仰せつかる、我が父・松波 多聞(たもん)よりの下知(げじ)であるぞ」

兵馬から()の名を出され、杉山はあわてて(かしこま)る。

「ぎょ、御意」

(つら)構えが一気に引き締まった。

町家である与太は元より、同心の杉山にとってもやはり雲上人からの(めい)だ。


「このまま『髪切り』に関する手掛かりが得られないのであらば、速やかに南北の奉行所が手を携えて捕縛に当たれるよう手筈(てはず)調(ととの)えろ、とのことだ」

今月の月番は南町だった。

一向に手掛かりがなく手詰まりの中、丁子屋にまで入られてしまった。

ゆえに、多聞がさような判断をするのも仕方のないことであった。

< 103 / 316 >

この作品をシェア

pagetop