大江戸ガーディアンズ
「よって、杉山には隠密廻りとして囮となり、吉原に潜んでもらいたい」
「御意」
杉山はすぐさま畳の上に手を付いて低頭した。
「今まで『髪切り』は、どういうわけか廓の大見世ばかりを狙っておる。
松葉屋に扇屋そして丁子屋と来れば、あとは……中萬字屋か久喜萬字屋だ」
そして、兵馬は与太を見た。
「与太、おまえには中萬字屋か久喜萬字屋の見世で囮になってもらう町家の者を探してほしい」
与太の目が見開かれた。
「えっ……奉行所は……町家の者なんぞを囮にお使いになるんでさ」
兵馬は首肯した。
——ならば、おいらが囮になって見世に潜り込めば……
「されども、おまえのような岡っ引きや下っ引きは使えないぞ。
世間に奉行所の『手先』だと知られておるからな」
——な、なんだってぇ……
与太の顔がみるみるうちに曇っていく。
「できうるならば、もともと奉公している見世の者なぞが囮になってくれれば、一番都合が良いのだがな」