大江戸ガーディアンズ
閉ざされた座敷の外から、声が聞こえてきた。
「……お内儀さん、お待っとさんでなんし」
ようやく、頼んでいた茶が来たようだ。
久喜萬字屋で働くおなごは、たとえ下働きであろうと此の見世でしか遣われぬ廓言葉を覚えさせられた。
語尾に「なんし」を付けねばならぬのが、その最たるものであった。
「早うお入り。茶ひとつ支度するのに、ずいぶんと遅いじゃないか」
おつたは苛々とした物云いで座敷へ招じた。
「へぇ、申し訳のうなんし」
か細い声とともに、襖がすーっと開いた。
与太は其の方へ目を向けた。
すると、そこにいたのは——おすてであった。