大江戸ガーディアンズ

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和佐と二人で下駄も履かず慌てて外に出た美鶴は、今し方奉行所へ向かうのであろう我が夫をそっと見送った。

いくら歴とした「奥」であろうと、今の姿は「吉原の遊女」である。

町方役人がすらりと居並ぶ中へ、顔をだすわけにはいかぬ。

其れは「番頭新造」の和佐も同じだ。

しかも美鶴よりも見知った顔が多い身とあって、いつの間にか傍らから離れて姿が見えなくなった。


夫に今度会えるときは松波の御家(おいえ)であろうが、吟味が始まり宿直(とのい)の日々が続くであろう。

——会えるのは、いつになることやら……


「えっ、二階(うえ)にいたのは皆んな逃げなんしたのに……」

一階(した)()たちの方が(はよ)う逃げられしなんし。なにゆえ……」

羽衣と玉菊の禿(かむろ)たちが身を寄せて合って話をしている。

平生はそれぞれの姉女郎贔屓から、喧嘩ばかりしているのだが、何のかの云いつつもやはり気の置けぬ相手なのだろう。


「なにかありんしたかえ」

美鶴が禿たちの話の輪に入る。

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