サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

***

「少し休まれては?」
「いや、大丈夫だ」
「ですが……」

デスクの上に置かれた大量の書類やファイルの山に、さすがの酒井も心配になる。
過労で倒れるんじゃないかと。

「出来るうちに少しでも片付けておきたいから」

財前の眼が、以前より確実に悪化していることに気付いている酒井。
眼をしきりに瞬きさせている様子を頻繁に見るようになったからだ。

***

毎朝目覚めるのが怖くて。
目を開けても光を失った世界だったらどうしようかと。

頻繁に視界が歪むようになっていた。
過労からくる焦点が合わなくなるようなものだと思ったが、確実に持病が悪化しているようだ。
眼球の奥からの圧迫感や時折鋭い痛みが出るようになり、視力が確実に低下していることに気付く。

自分に残された時間は、あとどれくらいだろうか?
もうあまりないかもしれない。

***

久しぶりに半休を取り、主治医の元で精密検査をする。
やはり思ってた通り、だいぶ症状が進行しているようだ。
……腫瘍が視神経を圧迫していると。

彼女と過ごしている時は生きている実感を味わえるが、こうして現実を突きつけられると全ての色が黒く塗り替えられそうで、不安が津波のように襲い掛かって来る。

「先生、……あとどれくらいですか?」

今まで避けて来た質問。
状況は理解出来ても、現実の全てを受け入れられる準備が出来ていなくて。
心のどこかで淡い期待を抱く自分が捨て切れなかった。

だが、もう限界らしい。
そろそろ覚悟を決める時が来たようだ。

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