サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

***

「本部長、本当に宜しいのですか?」
「……あぁ」

香港旅行から戻った俺は、今まで以上に仕事に時間を費やしている。

先日、主治医に失明する可能性を尋ねた所、『いつ視力を失ってもおかしくない状況』だと言われたから。
いつの日か訪れることは覚悟していたが、これほどまでに早く訪れるとは思いもしなくて。
前世で大罪を犯したのだろうか?
なんて現実から逃避したくて脳が勝手に解釈を起こしかねない。

彼女との思い出というか、彼女の姿を目に、脳に、心に焼き付けておきたかった。
そしたら、真っ黒な世界がスタートしても、きっと生きていけそうな気がして。

少し前までは時間のある限り、飛行機を眺めていたいと思っていたのに。
いつからだろう?
最後に見たい景色、目に焼き付けておきたい景色が彼女に変換されたのは……。

彼女のことを思えば、身勝手すぎると分かってる。

心に残るような思い出を作るべきではないことくらい。
だけど、彼女なら……。
俺と別れたとしても、新しい恋人との時間が俺との思い出を上書き出来るはずだから。
例え、彼女を傷つけてしまったとしても、一つくらいは我が儘言っても罰は当たらない気がして。

だから、俺はダメなんだろうな。
誰かを傷つけてでも、だなんて許されるようなことじゃないのに。
偏った愛情表現なのも分かってる。

彼女がして欲しいことの十分の一もしてあげてない
本当はしてやれないことはないのに、あえてせずにいる自分が本当に嫌になる。


今日もこうして、わざと仕事を増やし、彼女と過ごす時間を減らしているのだから。

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