サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
毎日会って、毎日好きな人の傍にいて。
心からお互いを信頼していたのに。
ある日突然、別れを切り出され、『はい、分かりました』とすんなり受け入れられる人が何人いるだろう?
そんなこと簡単に出来るものじゃない。
言う側の一方的な感情の押し付けだって分かるから。
だから、せめて……。
ほんの少しでも受け入れるための準備をさせてやりたくて。
会う時間を少しずつ減らし、築いた信頼を少しずつ崩しながら。
彼女の気持ちがほんの僅かでも受けれ易くするために、俺は最大限の努力をする。
クリニックの担当医表をもとに、彼女の勤務時間外にあえて仕事を重ねるように酒井に指示を出した。
きっとそのうち、俺に愛想を尽かして忘れてくれることを願って……。
***
「巡回はどうだった?」
「はい、異常なしです」
「ご苦労」
「あっ、そう言えば、幼児用のカートがだいぶ古くなったように思います。キャスターが故障気味のものが多く、子供連れの親御さんが押し辛そうにしてました」
「あぁ、あれな。この際だから、新しいデザインのものに変えるか」
「予算にもよりますけど、飛行機をモチーフにしたデザインとか良さそうですよね」
「おっ、それ頂き!早速企画案練らせろ」
「了解しました」
既存の業務以外に新規の仕事もどんどん増やし、出来るうちに会社の業績を少しでも伸ばしておこうと必死になっていた。
***
『明日から急な海外出張になったから』
一方的なメール。
それも、業務連絡に近い、簡素なもの。
中番、早番、非番と彼女にとっては久しぶりのご褒美勤務とも言えるスケジュール。
それを知ってて、あえて出張を重ねた。
日本にいたら、鉢合わせしてしまうことも予想されるから。