サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
***
彼とすれ違いの日々が始まって二か月が経とうとしていた、ある日。
遅番勤務の私は警備アラームをセットし、入口ドアをくぐると。
「お疲れさん」
「あっ、郁さんっ!お疲れ様ですっ」
相変わらず細身のスーツがよく似合うイケメンだ。
腕組して入り口横のドアにもたれ掛かっていた。
「鍵」
「え?……あ、忘れる所だった」
彼に見惚れて施錠し忘れる所だった。
手早く施錠して、彼の傍に駆け寄る。
「今日のお仕事はもう終わったんですか?」
「いや、まだ」
「え?まだなんですか?」
「ん」
「そうなんですね……。あまり無理しすぎると体に毒ですよ」
「ん」
彼は、小言を言う私の頭に手を乗せ、軽く撫でる。
ハイハイと言わんばかりに。
「三十分だけ付き合って」
「はいっ」
仕事の合間に会いに来てくれたというだけで嬉しくて、ついつい笑顔が零れちゃう。
あれ?
いつもなら、『ほら』って手を差し出してくれるのに。
何故か、今日は腕を組んだまま歩き出した。
考え事でもしてるのかしら?
空いた手にほんの少し寂しさを感じながら、彼の後を追う。
ターミナル内のエレベーターに乗り込み、五階へと上がった。
「久しぶりですね~」
「ん」
すっかり冬の風を纏った展望デッキは、空気が澄んでいて星空がよく見える。
「夜は冬が好きって仰ってた意味が今分かりました」
湿度が高い夏は雲が多くなるから、星が見づらいってことなんだと。
空を愛する彼だから、知ってる世界。
たった二か月前の会話なのに、もう何年も前にしたように感じた。