サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
「彩葉」
「はい?」
彼に呼ばれて振り返る。
久しぶりに呼ばれた『彩葉』という響きに心が躍った。
なのに……。
視界に映った彼は、さっきまでの優しい雰囲気の彼ではなく、展望デッキに吹く冷たい風のように突き刺さった。
「仕事以外で会うのは、今日で終わりにしよう」
「…………今、何て?」
私の耳がおかしくなったみたい。
ありえない日本語が耳に届いた気がする。
「『婚約者』の関係を、今日限りで終わりにしよう」
「………何でそんなこと言うの?」
「俺からの連絡を待つの、疲れただろ」
「………」
疲れてないとは言えない。
正直、待つのは限界に感じていた。
だけど、別れるくらいなら、幾らだって待ち続けられる。
「聞きたくない。……わぁ~わぁ~わぁ~……」
両手で耳を塞いで、無理やり声で掻き消す。
視界に映る冷視線の彼を見たくなくて、両目も瞑って、せめてもの抵抗を試みる。
すると、彼はそんな私を優しく抱き締めた。
「ごめん。俺の我が儘だってことは分かってる。だけど、もう限界で」
「何が限界なの?私が傍にいるのが迷惑なの?仕事の邪魔しないし、疲れた時はマッサージしに行くよ?」
「………ごめん」
「だからっ、何がごめんなの~ッ?!」
涙が止まらない。
『会いたい』とか『電話が欲しい』だなんて、一度も言ってないのに。
体を気遣うメールしか入れて無いのに……。
溢れ出す涙を指先で拭ってくれる。
こんなにも近くにいるのに、私の知る彼じゃないみたいで怖い。
「もう、視界の三分の一くらいは見えてないんだ」