サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

***

彼女を泣かせてしまった。
覚悟はしていたけど、やっぱり辛い。

少し前から徐々に視力が低下し、視界が狭くなって来ている。
失明するのも時間の問題。

仕事と称して、少しずつ点字の習得を始めた。
いつ見えなくなってもいいように。

自然消滅のような形で彼女の前から消えたかったが、それが無理だと分かっていた。
俺には『会いたい』だとか、『いつ会える?』といった連絡を一切寄こさないが、酒井には毎日のように連絡を寄こしているらしい。
俺の体調を気遣いながらも、五分でも会える時間がないか?と。
彼女は俺をずっと待ち続けている。
それを知って、放置するのも申し訳なくて。

せめて、お互いに気持ちを整理をするのが一番なのだと思うから。
彼女の涙を拭いながら、現実を突きつける。

「もう、視界の三分の一くらいは見えてないんだ」

予想通り、彼女は驚愕し、言葉を失った。

「いつ視力を失ってもおかしくない状況で、もう既に覚悟はしているから」
「………私が見える?」
「……今はな」
「痛みはあるの?」
「……時々」

悲しそうな表情に心苦しくなる。
そんな顔をして欲しいわけじゃない。

「立場上、やらなくちゃならないことは山ほどあるから。だから、視力が残っているうちに、やれることはやっておきたい」
「………うん」
「だから、………今は恋愛よりも仕事を最優先にしたい」

頭のいい彼女なら分かってくれるはず。
置かれている俺の状況を把握しているし、医師としての知識もあるだろうから。

彼女にとって、酷だということは分かってる。
だけど、こうでも言わなきゃ、彼女のふんぎりがつかないと分かってるから。

「幸せにしてくれる男を見つけろ。……俺なんかより、もっとイイ男を」

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