サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
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「立場上、やらなくちゃならないことは山ほどあるから。だから、視力が残っているうちに、やれることはやっておきたい」
「………うん」
「だから、………今は恋愛よりも仕事を最優先にしたい」
そんなこと言われたら、承諾するしか出来ないじゃない。
傍で見守ることも出来ないの?
私には本当に何も出来ないのかな……。
医師免許持ってても何も役に立たない。
全ての病気や怪我が治せるわけじゃないって分かってるけど。
大好きな人でさえ救えないって……。
彼のジャケットが私の涙で濡れていく。
こんなに近くにいるのに、かける言葉が見つからない。
「幸せにしてくれる男を見つけろ。……俺なんかより、もっとイイ男を」
何でそんなことを言うの?
他の人なんて必要ないのに。
「眼が見えなくなっても、構いませんっ」
「医師辞めて介護するつもりか?」
「………だって」
「俺よりもっとイイ男を紹介してやろうか?」
「ッ?!」
本当に鬼畜だ。
彼女に別の男をあてがうだなんて、聞いたことがない。
彼なりの優しさ?なのかもしれないけど、非常識すぎる。
今から眼科専門医に転身する?
知識が身に着くまで何年かかるだろう?
「最後に見た彩葉が、こんな泣き顔じゃ後悔しそうだ」
「っ……」
「だから、いつもみたいに笑えよ」
纏めていた髪留めを取った彼は、風に靡く髪を優しく撫でる。
「いい匂い」
香りを楽しむかのように彼は瞼を閉じた。
そして、髪にそっと触れるだけのキスをする。
私はじっとするだけしか出来なかった。