サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
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「お疲れ様、明日は八時に頼む」
「承知しました。お疲れ様でした」
マンションの入口に横付けされた車から降りる。
運転手の佐野に翌日の迎車時間を伝え、エレベーターで自宅へと向かう。
エレベーターを降りた先にいたのは……。
「何で、ここにいる?」
「……お帰りなさい」
玄関ドアの前に座り、彼女はスマホで音楽を聴いていたようだ。
十一月下旬に差し掛かり、空調が効いてるとはいえ、さすがに冷える。
「中に入ってればよかったのに」
「………入ってても良かったんですか?」
「………」
もう彼女とは別れたんだった。
半月ほど前に。
連絡する仲でもなければ、家を行き来する仲でもない。
ならば、何故、ここへ来たのだろう?
「とりあえず、冷えるから中に入れ」
「……ありがとうございます」
どれほどの時間をここで待っていたのだろうか?
彼女の唇が少し紫色に見えた。
エアコンと床暖と加湿器と空気清浄機と、ありとあらゆる機械の電源を入れる。
そして、彼女好みのミルク入り珈琲を淹れて……。
半月ぶりに見た彼女は相変わらず可愛くて。
淡いピンク色のニットワンピースがよく似合う。
「温まるから飲んで」
「ありがとうございます」
彼女にカップを手渡すと、仄かに俺の好きなあの香りがした。
「今日はどうしてここに?」
既に午前零時を回っている。
こんな深夜に別れた元恋人の家だとしても、男の部屋に一人で来るものじゃない。
彼女の隣に腰を下ろし、彼女からの言葉を待っていると、彼女は鞄の中から書類らしきものを取り出した。