サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

***

帰宅して彼女から貰ったノートを開いて、言葉を失った。
日記風の表紙だから、てっきり思い出の何かかと思ったのに。

中は点字で、治療と日常ケアの方法が記されていた。
だから、分厚いのか。

アルバム的な、スクラッチブックのような……。
ちょっとした思い出のノートかと思っていたら、俺に対する彼女の愛情がふんだんに詰め込まれている。

別れても尚、俺のことを気遣い、視力を失っても読み返せるようにと点字まで。

目頭が熱くなる。
胸が苦しい。
呼吸がし辛い。

こんなにも誰かに心を揺さぶられたことがあっただろうか。

眼を閉じて、彼女からのラブレターとも思えるノートを読む。
眼に優しい食事内容だったり、眼の疲労回復に役立つ情報だったり。

手術をする前提で、術後のリハビリの仕方やその時の注意事項だったり。
視力を維持するためのアドバイスも。

そして、最後のページには、彼女の言葉で綴られていた。
『夢は何歳になっても描ける世界』だと。


何度も気持ちの整理を図ろうと努力はした。
だけど、そんな簡単に割り切れるほど、脳内は単純じゃなくて。

こうして、忘れたと思い込んでいた感情も、彼女の行動一つで帳消しになるほど、俺の中の彼女は特別な存在になっている。

今の俺にとってデメリットは一つもない。
やるだけのことはやってみるか。

例え視力を失っても思い出は消えないし。
彼女が残してくれたこのノートがある。

それに、もし手術が成功したなら……。
もう一度彼女に会って御礼が言いたいし、諦めた夢に再チャレンジすることも出来るはず。

彼女の笑顔が見れるなら……。

< 133 / 142 >

この作品をシェア

pagetop