サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

大企業を率いる人だから、弱みを見せれないとしたら、私は真逆のことをしたことになる。

「謝った方がいいかな」
「誰にですか?」

ロッカー前で独り言を呟いたつもりが、休憩中の丸山さんに聞かれてしまったようだ。

「何でもない、気にしないで」
「もしかして、新しい彼氏でも出来たんですか?」
「え?……何でそうなるの?」
「謝罪するのを躊躇う相手なんて限られてますよ?」
「………」

彼氏でも友人でもない。
顔見知りの同僚の域の人。
同じ戦場で一緒に戦うような仲間ってだけ。
ただそれだけの相手。

しかも、あそこまで苛つかせて、脅されて。
そんな相手が彼氏だったら、私相当ヤバい人だよ。

「何一人で納得してるんですか?」
「え?」
「今日の先生、いつもと違いますよ~」
「………ん、そうかも」

明るくて何事にも全力投球の性格が持ち味なのに。
こんな風に後ろ向きな気持ちになったのは別れて以来初めて。

診断で迷うこともあるし、処置してて悩む時だってある。
だけど、その時その時でベストであり続けたいから、常に全力で患者にあたってる。

だけど、彼に対しては……。
もっと違うアプローチがあったんじゃないかと後悔してしまった。

「止めっやめっ!もう考えるの止めにするッ!」

あれこれ考えても『話し掛けるな』って言われてるし。
これ以上関わったら、さっき以上の剣幕で怒って来そうだもん。

「その方が先生らしいです」
「だよね?」
「はい」
「よ~し!今日も頑張ろうっと!治田くん、交代するよ~」

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