サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

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「本部長、……休まれますか?」
「いや、大丈夫だ」
「ですが…」

検査入院した日から二週間ほど経ったある日。
自室で企画書に目を通していると、珈琲を手にした酒井が声を掛けて来た。

自分でも自覚している。
だいぶ目が疲れていて、気づくと目頭を指先で押さえていると。
それを目にした酒井は心配になったようだ。

「この後は会議も無いですし、今日は早めに帰られては如何ですか?」

いい香りを纏った珈琲カップが置かれた。
それを手にして、香りを楽しむ。
目だけでなく、心的な疲れもリフレッシュしたくて。

年末年始の企画を纏めなくてはならない。
まだ八月だが、この時期から動いてないと年末には間に合わない。

「最近、あいつが何をしてるか知ってるか?」
「……洋平さんですか?」
「ん」

加瀬 洋平二十八歳。
父親の愛人の息子で、ASJの子会社のサンライズ航空(LCC)の常務をしている。
父親に似て、女性の交友関係が広く、常に女の噂が絶えない。

自分の会社の社員ならまだしも、親会社である俺の会社の職員にまで手を出そうとしている。
常に目を光らせておかないと、メディアの餌食になるのは必至だ。

「こちらの真似をして、新路線開拓をしてるようです」
「フッ……、あいつらしいな」

俺と違って、航空実務の叩き上げでもなければ、経営学専攻でもない。
一応、四年生の大学は卒業しているが、国立ではなく、父親の金で入った私立の大学出だ。

そんな奴にこの会社を渡さなければならないという現実が重く圧し掛かる。

この眼が、寝て起きたら完治しているなら話は別なのだが……。

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