サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
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「はい、空港病院医師の環です」
「ASJの本部長秘書の酒井です」
「あ、酒井さん。こんにちは~」
「お仕事中、申し訳ありません」
「……どうされました?」
内線の着信が鳴り、近くにいた私は受話器を取った。
すると、財前本部長の秘書の酒井さんからの電話だった。
「突然で申し訳ないのですが、疲労回復用の点滴をお願いしてもいいでしょうか?」
「はい、それは構いませんが、酒井さんがですか?……それとも、財前さんが?」
「勿論、財前です。早くに退社するように促しても聞く耳持たないですし、会議や打ち合わせを減らしても、自ら新しい仕事を入れてしまう状況でして」
「……仕事の鬼ですね」
「はい、私が言うのもなんですが、鬼です。……内緒ですよ?」
「フフフッ」
酒井さんは財前さんと違って、人当たりが柔らかい。
垂れ目というのもあるだろうが、声音がいつでも優しく感じる。
「財前は要らないと言うと思いますが、社長命令なので、どうかご協力願えますか?」
「………社長、命令……ですか」
「はい。他の者には知られたくないので、点滴セットを分からないように本部長室まで持って来て頂き、処置をお願いしたいのですが」
「……分かりました。準備出来次第伺います」
「お手数お掛け致します」
社長命令って何?って一瞬考えてしまったけど。
恐らく、誰かしらが強引に治療を促さないと顧みないってことなんだと思う。
医師として点滴をするくらいなんてことない。
ただ、彼との間には、高くそれでいて分厚い壁がある。
「まっ、何とかなるでしょ」