サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)

***

「頼んだ覚えはない、……帰れっ」

いるはずのない人間が、『本部長室』と書かれた部屋の中にいる。
酒井が気を回して依頼したようだ。
社長である父親から言い遣っているんだろうが、そんなことはどうでもいい。

他の医師ならともかくとして、この女はダメだ。

「点滴が終わるまで帰れません!いえ、帰りませんッ!!」
「んだとッ?!」

応接用のソファーに座り、鞄から輸液などを取り出し準備を始めている。
そんな彼女の腕を掴み、部屋の外へと追い出そうとすると、彼女は必死に抵抗し始めた。

「本人が要らないと言ってるのに?」
「………医師として放っておけませんっ」
「どこも悪くないのに、……何故?」
「悪いか悪くないかは医師である私が判断します」
「話が通じない女だな」
「何とでも言って下さい」

ソファーに腰かける彼女を威圧感のある態度で見下ろしているのに、先日と違い、怯むことすらせずに睨み返してきやがった。
どうしたものかと、思案した、その時。

「ッ!?」

彼女の腕を掴んでる腕では無い方のジャケットの襟元から手を滑り込ませ、上着を脱がせようとしやがったぞ。

……そう来たか。
それなら、俺にも考えがる。

彼女の腕を掴む手をパッと離し、両手を軽く上げる。
『降参』するかのポーズで。

そんな俺の行動に驚きつつも、彼女は手早く準備を進める。
俺は彼女の目の前でジャケット脱ぎ、ネクタイを緩め、Yシャツの袖を捲って……。

彼女は駆血帯を手にして立ち上がった。
俺は彼女の代わりにソファーに腰を下ろし横になる。

そして、俺の腕に駆血帯をしようと近づいた、その時、俺は差し出して来た彼女の腕を掴んで引き寄せた。

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