サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
***
本部長秘書の酒井さんから電話を貰い、本部長室がある階まで来ると、部屋の前で酒井さんが待っていた。
そして、同じフロアにある応接室のような小部屋に案内された。
「こちらに目を通して頂き、内容のご確認をお願いします」
何これ……。
誓約書?
手渡された書類には、秘密保持は勿論のこと、診療に関する制約の詳細が記されている。
「ここまでする必要があるんですか?」
「はい」
「断ることも可能ですよね?」
「……………はい」
何、今の間は……。
明らかに断ったら困る的な雰囲気なんですけど?
二枚目の用紙には、理解し難いことが記されている。
室温?本数?角度?
何、………これ。
もしかして、触れてはいけない世界に入り込んだんじゃ?
読めば読むほど頭が混乱する。
『点滴』をしに来たはずが、何故こうなる?
「あの……」
「はい、……仰りたいことは分かります」
「分かるんですか?」
「はい」
いつもと全く変わらない柔和な表情で頷く酒井さん。
けれどこの時、初めて知った。
この優しい笑顔は、財前さんを守るために標準装備された顔だということを。
近くに接近しすぎて知ってしまったようだ。
***
書類に沿って説明を聞くと、大企業を率いる立場上、健康面での問題が一番タブーなことらしい。
だからこそ、その弱みを第三者に知られることは進退に影響し、経営にも支障を来すと。
「でも、何故、……私なんですか?主治医も含め、他にも医師はいるのに」
「それはですね。財前が今の職に就任して三年が経ちますが、私の知る限り、仕事以外の会話をしたのは環医師以外いないからです」
「え?」