サイコな本部長の偏愛事情(加筆修正中)
後部座席に標準装備されているアシストグリップにS字フックを取り付け、それに輸液を吊るした。
「シートを倒します?少しでも楽な体勢の方がいいので」
本当に車内で処置する気だ。
自身の鞄とは別の白いトートバッグから次々と出て来る医療用具を目にして、流石の俺も唖然とした。
ほんの少しシートを倒し、Yシャツの袖を捲って……。
酒井や両親との取り決めがあるのは分かってるいるが、だとしてもここまで普通するだろうか?
お金が目的ではないと言っていたが、だとすると何のためにここまでするのだろう?
「シートベルトしますね」
点滴を施し、運転席に座った彼女はナビ検索し始めた。
「駅から程近いので自宅まででもいいですか?」
「……好きにしろ」
「有難うございます。では、出発しますね」
車は静かに発信した。
「高速でもいいんですか?」
「下道だと一時間かかるぞ」
「高速使わせて頂きます」
自分以外の誰かが運転する車に乗ったのは何年ぶりだろう?
秘書を連れて移動する際でも自身で運転する俺が、愛車の運転を許したのは初めてだ。
暫く様子を見ていると、意外にも運転は上手い方だ。
無駄なブレーキングも無ければ、ハンドル捌きも問題ない。
スムーズに首都高速に入ったのを見届け、俺は目を閉じた。
少しでも体を休めたくて……。
***
「財前さん」
もわっとした夏の湿度を含んだ熱気を感じて目を開けると、後部座席のドアを開けた状態で環医師に肩を叩かれていた。
「針抜きますね」
時間調整してあったようで、輸液はまだ少し残ってる状態になっていた。
完全に寝落ちしていた俺は、車が停車したことすら気が付かなかったようだ。