【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「なっ。お前、泣いているのか? いいから座れ」
 ちっ。とルドルフが舌打ちをして、席を立つ。
 アルベティーナは涙を止めようと必死になっていた。まさか、この場で泣いてしまうとは自分自身でも思っていなかった。とにかく目を見開き、流れた涙を手の甲で拭い、心を落ち着かせる。
 そこへ、ルドルフが湯気の立つカップを二つ手にして戻ってきた。
「ほら。これでも飲んで落ち着け」
 まだ書類の山が残っているこの机でお茶を飲むことに気が引けるアルベティーナだが、そのカップを受け取った。
「ありがとう、ございます」
 (いぶ)したような香りが紅茶から漂ってきた。この紅茶は、飲んだ後すっきりとするためルドルフが好んで飲んでいる紅茶だ。
「落ち着いたか?」
 ルドルフは紅茶には手を付けず、机の上に肘をつき頬杖をついてアルベティーナをじっと見つめている。あまりにもその視線が気になってしまったため、アルベティーナも顔を向けると、彼と目が合いふっと微笑んだ。
「大丈夫そうだな。よかった。で、何があったんだ? お前が泣くほどのことだなんて」
「あ……っ」
 核心を突かれてしまうと、アルベティーナは言葉が出ない。
「言いたくないなら、無理に言わなくてもいいが……」
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