【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
遅番の場合、皆、仕事を終えるとさっさと帰る。報告書というものは明日でも問題ないというのが彼らの考えなのだ。その中アルベティーナだけが羊皮紙を広げていた。そこに今日の日付と名前だけを書いてみたものの、それ以外は白紙のままだった。
アルベティーナは席を立った。広げた羊皮紙をくるくると丸め、筆記具と共に棚へと仕舞い込む。最後の一人となった彼女は、騎士の間を後にした。
向かう先はルドルフの執務室である。仕事が終わったらあそこへ向かうようにと言われていたからだ。
コツコツという足音が、異様に大きく聞こえた。遅番を終えた騎士達は皆帰ってしまったし、夜間担当する騎士達は、この時間はとっくに持ち場についている頃。だから、この廊下を歩いている騎士はアルベティーナしかいないのだ。
ルドルフの執務室の扉の前に立つ。その場で一度、肩を上下させて大きく息を吐いた。
扉を叩こうとして手をあげたが、躊躇する。だが、シーグルードと結婚したいかと問われると、その答えは否だ。人として尊敬はできるが、これからの人生を共に歩みたいと思う人物ではない。それを断る口実としてルドルフを選んだだけのこと。
アルベティーナは扉を叩く。
トントントン――。
「開いている。入ってこい」
すぐさま、中からルドルフの声が聞こえてきた。
アルベティーナは席を立った。広げた羊皮紙をくるくると丸め、筆記具と共に棚へと仕舞い込む。最後の一人となった彼女は、騎士の間を後にした。
向かう先はルドルフの執務室である。仕事が終わったらあそこへ向かうようにと言われていたからだ。
コツコツという足音が、異様に大きく聞こえた。遅番を終えた騎士達は皆帰ってしまったし、夜間担当する騎士達は、この時間はとっくに持ち場についている頃。だから、この廊下を歩いている騎士はアルベティーナしかいないのだ。
ルドルフの執務室の扉の前に立つ。その場で一度、肩を上下させて大きく息を吐いた。
扉を叩こうとして手をあげたが、躊躇する。だが、シーグルードと結婚したいかと問われると、その答えは否だ。人として尊敬はできるが、これからの人生を共に歩みたいと思う人物ではない。それを断る口実としてルドルフを選んだだけのこと。
アルベティーナは扉を叩く。
トントントン――。
「開いている。入ってこい」
すぐさま、中からルドルフの声が聞こえてきた。