【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 アルベティーナは彼の寝台にぽすっとおろされた。
「で? どうする? このままでいいのか?」
「できれば、湯浴みを……」
 胸元に両手を当て、はじらうように答えると、ルドルフはふっと笑みを零す。その笑顔に、アルベティーナの心はいつも捕らわれてしまうのだ。
「浴室はそこだ。タオルや着替えは、置いてあるものを好きに使え」
「はい……」
 寝台からおりたアルベティーナは、浴室へと向かう。ルドルフの言っていた意味がそこでわかった。綺麗に畳まれたタオルやガウンが、棚に並べられているのだ。また浴室内には、高級そうな石鹸も並んでいた。浴槽にはたっぷりの湯が張られていた。もしかしてルドルフが準備してくれていたのだろうか。
(あ、いい香り……)
 石鹸を泡立てて、しっかりと自分の肌に馴染ませていく。いつものルドルフの匂いが、身体に沁みていくような感じがした。
 念入りに隅から隅まで身体を磨きあげたアルベティーナは、ルドルフが言っていた着替え――ガウンを羽織った。
「お待たせしました」
 アルベティーナが浴室から戻ると、ルドルフはグラスを手にしていた。グラスの中には琥珀色の液体が揺らめいている。
「俺も湯を浴びる。お前はとりあえずこれでも飲んで待っていろ」
 ルドルフから手渡されたグラスを受け取ると、アルベティーナは一口それを飲んだ。
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