【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「あ、美味しい……」
「そうだろう? もう少し飲みたかったら、そこのテーブルにある」
「ありがとうございます」
 アルベティーナが礼を口にすると、ふっとルドルフの顔が綻んだ。それはアルベティーナが好きな彼の表情の一つでもある。
 ルドルフの姿が浴室へ消えたのを見送ると、もう一杯飲み物をもらった。
(このお酒……。どちらのお酒かしら。美味しいわ)
 喉が渇いていたからか、アルベティーナは一人でその飲み物を楽しんでいた。
 二杯目を飲んだ頃、瞼が重くなるような感覚があった。グラスをテーブルの上に置くと、寝台の上に腰をおろす。
(団長……。遅いかも)
 ルドルフがなかなか浴室から戻ってこないような気がした。いや、彼がそこに入ってから、それほど時間は経っていないのだ。それでも彼を待つ時間は、とても長く感じていた。
(もしかして、飲み過ぎたかしら)
 この国では十八から酒を飲んでも良いことになっているが、アルベティーナはあまりお酒を嗜まない。だから、ウォルシュ侯爵にグラスを渡されてそれを飲んだ時も、喉元を通り過ぎる刺激に、顔をしかめてしまったくらいなのだ。
 だが、このお酒は甘くて葡萄の香りがして、飲みやすかった。そして湯上りということもあって、二杯も飲んでしまった。
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