隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
第七章
 瞼の裏を光で叩かれたアルベティーナは、ゆっくりと瞼を開けた。
(私、いつの間に帰ってきたのかしら)
 身体を起こすと、さらりと絹の肌触りを感じた。
(ここ。私の部屋じゃない)
 アルベティーナは記憶を失う前のことを必死で思い出す。
(昨日は、団長の執務室に行って……)
 シーグルードの婚約者になりたくないがため、ルドルフに純潔を奪ってもらいに行ったのだ。そして、行為に及んだ。
(だけど、ここ。団長の執務室でもないし)
 必死で頭を動かし、この場所のヒントになるようなものを探し出す。だが、部屋が豪勢であるということだけはわかったが、場所を特定するようなものは見つからなかった。
 天蓋付きのふかふかの寝台。別邸でアルベティーナが使っているものよりも上等なものだ。部屋の白い壁には金箔で模様が施されており、天井も同様に落ち着いた白さである。
(どこ、ここ……)
 寝台から降りるために身体を動かすと、足の間から何かが流れ出る。粗相をしてしまった感覚に、アルベティーナは一人身体を強張らせ、結局寝台の上から動けずにいた。
「あぁ。目が覚めたのか?」
 音を立てることも無く、部屋には一人の男が立っていた。だが、その相手を見てアルベティーナは目を丸くしてしまう。
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