【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「早速ですが、まずはお着替えを」
 目覚めてからずっと絹の夜着姿のままであった。布地はしっかりしており、肌が透けるものでもないのだが、人前に出るには相応しい恰好とは言えない。
 アルベティーナは彼女たちに見覚えがあると思った。あの潜入調査のときに、ルドルフの執務室で着付けてくれた彼女たちだ。
 だが、アルベティーナもそれを口にするようなことはしない。
 ラベンダー色の落ち着いたドレス。赤茶色に染めてある髪も、手早くまとめられた。
「ティナ。準備はできたかい?」
 ノックもせずに部屋に入ってきたシーグルードを侍女たちが咎める。
「ああ、すまない。待ちきれなくてな」
 悪びれもせずシーグルードは口にする。
「ティナ、よく似合っている」
「ありがとうございます……」
 侍女たちは一礼すると、さっと部屋を出ていった。
「あの。シーグルード様……」
 やはりアルベティーナにはまだ現状を信じられない気持ちがあった。ずっと好きだったルドルフがシーグルード。そう言われれば納得できるところもあるのだが、やはりシーグルードの王太子という肩書に尻込みしてしまう。『好き』という気持ちの先に、『結婚』を考えなかったわけではないのだが、彼がルドルフだと思っていた時には、『結婚』にも憧れを抱いていた。
「まだ少し、怖いです……」
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