【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「シーグルード様、少し一人にしていただいてもいいですか?」
 アルベティーナがそう口にしたにも理由があった。何しろ、昨日の夜から彼女の側にはずっとシーグルードがいるのだ。
「ティナ……」
 シーグルードは静かに彼女の名を呼んだ。
「少し、考える時間をください」
 それがアルベティーナの本音だった。ルドルフだと思っていた人物は実はシーグルードで、気持ちを伝えたものの、とんとん拍子に婚約者にとまで迫られて、彼の両親にまで挨拶をしてしまい。とにかく、気持ちを整理したかった。
 好きな相手だったとしても、アルベティーナの心境は複雑なのだ。恐らく、シーグルードもそれに気付いたのだろう。「悪かった」と言葉までは口にしないものの、申し訳なさそうに顔を歪ませていた。
「わかった。私は少し離れた場所にいるから。君は、昔からこの場所が好きだったんだ」
 アルベティーナにとって、ところどころ引っ掛かりを感じるのは、シーグルードも王妃も、昔から彼女のことを知っているような言葉を口にすることだ。
 シーグルードはゆっくりとその場から離れていく。それでも何度も何度も振り返ってくるのは、アルベティーナがそこにいることを確認するためだろう。
 アルベティーナはドレスが汚れるのも気にせずに、その場にしゃがみ込んだ。
< 165 / 231 >

この作品をシェア

pagetop