【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 ――ドン。
 シーグルードも拒まれるとは思っていなかったのか、目を丸くしてアルベティーナを見下ろしていた。
「こういう……。こういう場所ではやめてください」
 顔を真っ赤にして口元を押さえているアルベティーナに、シーグルードは「すまない……」と優しく声をかけた。


 シーグルードの婚約者としてアルベティーナが決まったという話は、その日のうちにさまざまなところに報告されたようだ。ただ、正式な手続きは『婚約の儀』と呼ばれる儀式を関係者を集めて行う必要があるため、あくまでも『内定』という形になっている。
 シーグルードの婚約者に内定した後、アルベティーナは騎士として仕事をこなすことはできなくなっていた。それが彼女の心に引っかかっていた。
(せっかく、仕事にも慣れてきた頃だったのに……)
 アルベティーナがたまに表情を曇らせていることにシーグルードも気づいたのだろう。自身の手が空くと、すぐにアルベティーナの元に来て、甲斐甲斐しく世話を焼いていく。彼女自身、そうされることは嫌ではなかったが、シーグルードの献身的な愛情に戸惑いを覚えることもあった。
 なぜ。どうして。
 その気持ちがアルベティーナの中にあるからだ。
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