【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 誰も教えてくれない。それが不安の原因の一つでもあった。
 シーグルードの婚約者に内定したアルベティーナに待っていたのは、『婚約の儀』に向けての教育だった。ずっとヘドマン領にこもっていたアルベティーナは、そこそこの振舞と知識は身に着けているものの、やはり『お淑やかさ』が欠けていると講師役の公爵夫人からは散々言われていた。講師役の公爵夫人がサーレン公爵夫人であるため、どこか嫌味の一つや二つも隠されているのだろうと勘繰るほど、アルベティーナは駆け引きにも慣れていない。
 ただ素直にサーレン公爵夫人の言葉を言葉通りに受け止めるだけ。だからサーレン公爵夫人もアルベティーナに嫌味や小言を口にする回数も減っていった。つまり、何をしてもアルベティーナには効果が無いということに気づいたのだ。
 こういった話は侍女を通してシーグルードの耳にまで届くようだ。それを聞いたときの彼は、大口を開けて笑っていた。さらに、目尻に溜まった涙まで拭うほど。
「そうか……。さすがのサーレン公爵夫人も、ティナの手にかかると形無しだな。悪い人ではないのだが、少々細かいところがあってね。彼女から指導を受けた者は、皆、涙するとも言われていた」
「そうなのですか。てっきり、私が世間知らずすぎて呆れているものと思っておりました」
 彼から与えられた部屋で一人、ソファで本を読んでいたアルベティーナの元を訪れたのはシーグルードだった。
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