【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「ああ、やっと笑ってくれましたね」
 このような暗闇であっても、様々なところから届く光によって、アルベティーナの表情はしっかりと彼に見えていたらしい。それでも彼女にとって、彼のような男がなぜここまで自分を構おうとしているのかが不思議で仕方なかった。
「アルベティーナ嬢。あなたには、二人兄がいますよね?」
「はい」
(そのうちの一人はすぐそこにいるし、むしろ殿下の護衛についていると思うのだけれど……。何故、そのようなことを尋ねるのかしら)
 そのような思いもあって、アルベティーナは返事をするとともに小首を傾げてしまった。それを見たシーグルードはくくっと笑う。だからまた、アルベティーナは不思議そうに彼を見上げた。
「ああ、申し訳ない。あまりにもあなたが可愛らしくて。あなたのような妹を持つエルッキが羨ましい」
「ですが。エルッキお兄さまとは今日、久しぶりにお会いしました」
「そうか……。あなたはヘドマン領にいるのでしたね。こちらで過ごす予定は無いのですか? 社交界デビューもしたことですし、これから社交界シーズンも始まります」
「父と一緒に戻ります。あそこは、国境の要ですから。父が長く不在にしていれば、隣国へ付け入る隙を与えてしまいます」
「ですから、あなただけでも」
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