【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 自分自身への脅しであれば、アルベティーナはいくらでも耐えられる。ヘドマン領の私兵団に交じり訓練を積み重ねてきた。それに、騎士団に入団してからももちろん、体力のある男性に負けないようにと、歯を食いしばってきた。肉体だけでなく精神的にも鍛えてきた。
 だから、他人の命をかけられてしまうと、どうしたらいいかがわからない。
 アルベティーナの本能が危険だと囁いているにも関わらず、カップに手を伸ばした。
 隣にいるマティアスの視線が痛いくらいに突き刺さってくる。気を抜くと、身体が震えそうになる。だが、そのような動揺を彼に見せるわけにもいかない。
 気丈にソーサー毎カップを手にし、ゆっくりと口元へと運ぶ。
 鼻腔を刺激するお茶の香り。
「こちらの茶葉は?」
「マルグレットのものだよ。お茶は、マルグレットの物の方が質が良い」
 オティリエもマルグレットの茶葉を褒めていた。ゆっくりとカップを傾け、口に含む。渋みと甘さが、一気に口の中へ広がった。
(これ……、この味……)
 紅茶であるにも関わらず、懐かしい味がする。いや、懐かしいというそんな素敵な思い出の味ではない。潜入調査でウォルシュ侯爵から渡されたグラスに入った液体と、同じような後味なのだ。
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