【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「行儀が悪いな。人の物を勝手に奪うなんて。まあ、いい。時間はたっぷりあるからね。それに、こちらには大事な人質もある。君が、そんな愚かな行為を続けるのであれば、人質には人質らしくしてもらう必要があるけど?」
 アルベティーナはギリリと奥歯を噛み締めた。クレアを取られてしまっている以上、安易な行動はできないというわけだ。
「さて。そろそろ君を君の部屋に案内しようか。そこには、君の夫となるべき者もいるから、二人で()()()()やっていなよ。僕たちが欲しいのは、その姿だけなんだから。中身はどうでもいい」
 その一言が全てを物語っている。つまり、アルベティーナを傀儡の女王とし、実権は全てマティアスが握ろうとしているのだ。即ち、それが彼が口にした『駒』である。
「ほら、立ちなよ」
 マティアスは乱暴にアルベティーナの腕を掴むと、無理矢理立たせた。
 アルベティーナが立った瞬間、ぐらっと身体が傾きかけたのは、バランスを崩したからではない。足元に力が入らなかったからだ。
(思っていたよりも、薬の効き目が早い……)
 一度、口にしたことのある薬だ。あの薬がどのような効果をもたらすかなど、痛いほどわかっている。
「なんだ。強気な態度だったけど、やはり弱いんだな」
 ふっとマティアスがアルベティーナの耳元に息を吹きかけた。
「ひゃっ……」
「たまらないな。その声……」
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