【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
◇◆◇◆

 アルベティーナが姿を消した途端、すぐさまエルッキが駆け寄ってきた。
「殿下。妹は?」
「あはははははは……」
 先ほどまで紳士の仮面を被っていたシーグルードは、彼女の姿が見えなくなってすぐに、それを脱ぎ捨てた。
「相変わらず、とんだじゃじゃ馬姫だな。エルッキ、警備隊を動かせ。女性が襲われている。そしてそこに向かったのが、アルベティーナだ。そこから飛び降りて、な」
 それを聞いたエルッキは頭を抱えて項垂れた。だがすぐに側に控えていたもう一人の護衛騎士であるミラン・グランに今の件を告げると、急いで通信機を取り出す。この王城の敷地内に不審な輩がいるとするなら、それらを取り締まるのはセヴェリが所属する警備隊の出番だ。エルッキは警備隊の隊長へと連絡を入れる。
「殿下。ティーナが動いたとなれば、父にも報告をしてきてもよろしいでしょうか」
「ああ。だが、我々もそこに向かおう」
「殿下」
 と声を上げたのはミランだ。彼もセヴェリのように線の細い男である。金色の長い髪を一つにまとめており、遠目から見たら女性に見えなくもない。
「ミラン。黙ってついてきてくれるな? ルドルフ、そこにいるのだろう?」
「はい……」
 どこからともなく音も無く現れた男。ルドルフと呼ばれたその男だが、よく見るとシーグルードによく似ているようにも見える。違うのは髪の色くらいだろうか。シーグルードが、軽やかな金色に対してこのルドルフはチャコールグレイ。
「さて、じゃじゃ馬姫のお手並み拝見と行こうか」
 先ほどまで紳士面をぶら下げていた男は、もう、そこにはいなかった。

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