【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 唇が重なった瞬間、アルベティーナの背筋にはさわさわと虫が這うような感覚が襲ってきた。
「いてっ……、くそっ」
 マティアスはそう口元を押さえながら、アルベティーナから離れる。
「こんなことをしたって無駄だよ。君は僕を受け入れるしかないはずだよ。君が連れていた侍女を無事に返して欲しければね……」
 アルベティーナはジロリとマティアスを睨みつけることしかできない。クレアが彼の手の中にいる以上、圧倒的に不利なのはアルベティーナなのだ。だからといって、シーグルード以外の男に身体を許したいとも思わない。
「それに……。いいの? 僕が欲しくないのかな?」
 つつっとマティアスの指が、アルベティーナの頬を撫で上げる。
 ふるっと身体が震え、身体の中心に熱が溜まる。逃げたいのに逃げられないのは、クレアがいるから。いや、そろそろ例の薬がアルベティーナの自由を奪い始めるから。
「君のここに、僕をたくさん注いであげる。そうすれば、あの王太子だって君を手放すはずだ」
 下腹部を撫で上げられれば、微かに腰も震える。それをマティアスは愉悦に満ちた表情で見下ろしていた。
 寝台の上で仰向けにされているアルベティーナは熱い吐息を深く吐く。目の前のマティアスを睨みつけることしかできない。
(大丈夫……。必ず、シーグルード様が助けに来て下さるから……)
 心の中で自身にそう言葉をかけ、意識をしっかりと保つように奥歯を噛みしめる。
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