【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「それは、ティーナが私の娘、だからだろうな……。それは、それで……。まあ、ティーナには申し訳ないと思っている」
「どうしてお父さまが謝るのですか? 私はお父さまの娘でいられて幸せですし、このような有難いお話を、シーグルード様からいただけることも光栄なことであると思っております」
「と本人が言っている。アン。もう、あきらめるしかないだろう……」
「あなたは以前からこうなることが分かっていた、というような感じがしましたけどね」
 コンラードもアンヌッカからのそれに否定はしなかった。
「私、気分が優れないので、少し休んでまいります」
 すっと立ち上がったアンヌッカは、サロンを出ていく。
「お母さま?」
 アルベティーナは不安になって彼女の後を追おうとしたが、それをコンラードにとめられた。
「気にするな。アンにはアンなりに思うところがあるのだよ。一人になって考えたいことだってある。後で私が様子を見に行くから、今はまずセヴェリの話を聞こう」
 アルベティーナは、カップを手にした。これは彼女が好きな茶葉だ。少し、果実の香りが漂い、後味も爽やかなお茶。アンヌッカがあのような感情になってしまっているのが少し心に引っかかってはいるが、セヴェリが口にした『女性騎士』は、アルベティーナにとっては非常に魅力的なものでもある。
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