【受賞】隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
「二年前。ティーナが社交界デビューしたあの舞踏会で、人身売買に関わっていたプレヴィール子爵が捕まった」
「もしかして、あの時の?」
「そう。ティーナが蹴りを入れて気絶させた、優男(やさおとこ)だ。もちろん、プレヴィール子爵本人は、あのときの女性をティーナであることは知らないはずだ。だから、仕返しとかそういうのは心配しないで欲しい」
 アルベティーナは彼からの報復を心配していたわけではない。あの場にいた女性を攫おうとしていたのが、爵位ある人間だったことに驚いただけなのだ。
「あの場にティーナがいたことを知っているのは、殿下の周辺にいる者だけ。だが、ティーナの活躍をあの殿下が忘れるわけもなく、今回の女性騎士の話があがったときに、絶対に必要な人材だと熱く語っていらっしゃった」
「お恥ずかしいですね……」
 アルベティーナは本当に恥ずかしかった。そのようにシーグルードから熱く語られたことと、あのときのことをきっちりと覚えられていたことと。彼女の白い頬がほんのりと色づき始める。
「どうだ? ティーナ。引き受けてみる気はないか?」
 先ほどコンラードは『命令』と口にしていたが、それでもアルベティーナの意思を尊重させてくれるようなセヴェリの気遣いに、彼の優しさを垣間見たような気がした。
「セヴェリお兄さま。その話、喜んで引き受けさせていただきます。と、殿下にお伝えください」
 アルベティーナはにっこりと微笑んで答えた。
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