隠された王女~王太子の溺愛と騎士からの執愛~
 突き当りまで進むと、見るからに重そうな鉄の扉があり、それをセヴェリは軽々と開ける。彼は扉の向こう側に人がいないことを確認してから、彼はアルベティーナを呼ぶ。
 なんと、扉の向こう側はルドルフの執務室へと続く廊下になっていたのだ。騎士のトロフィーや鎧などが飾ってある見慣れた廊下。その廊下の壁の一部が隠し通路へと続く隠し扉になっていたのである。
「ティーナ、この場所を覚えておきなさい」
 騎士団の人間であれば誰でも知っている隠し扉なのかと思いきや、どうやらそうではないようだ。そもそもあの裏口だってセヴェリがいなかったら、アルベティーナにはわからなかっただろう。
 セヴェリが扉を叩くと、「入ってくるように」とルドルフの声が扉の向こう側から聞こえてきた。
「セヴェリか。アルベティーナはどうした?」
 恐らくアルベティーナの姿はセヴェリの背にすっぽりと隠れてしまって彼から見えていないのだろう。ルドルフの声が少し不機嫌なようにも聞こえた。
「お待たせしまして申し訳ありません」
 身体の大きなセヴェリの後ろから、アルベティーナが姿を現し、頭を下げる。そして顔を上げれば彼女の視界には、正装に身を包むルドルフの姿が飛び込んできた。チャコールグレイの前髪を後ろに撫でつけている姿は、普段の姿と印象と異なっていた。
「隣の部屋に侍女を呼んである。すぐに着替えてこい」
< 54 / 231 >

この作品をシェア

pagetop