エリート航空自衛官の甘すぎる溺愛で囲い娶られました~敏腕パイロットの25年越しの一途愛~
 置いていかれないように。ただひたすら前へ前へ、靴の中に水が染み込むのもかまわず確実に足を踏み出す。

 次の避難所はどこだろう? 観光した市街地より奥まったところにあるとはいえ、宿泊した旅館は孤立した場所ではなかった。

 走っているわけでもないのに心臓がうるさい。避難指示を出す人の声は遠く、雨と鼓動の音が掻き消していく。

 それなのにどうしてだろう。私の耳は、少し離れた先で一生懸命歩いていた子供の小さな悲鳴を聞き取った。

「あ……!」

 歩いていた道が崩れ、子供の身体が投げ出される。

 繋いでいたはずの母親の手が離れ、子供だけが崩れる道の向こうに落ちていこうとしていた。

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