水と油の私達
「は?」



近くで聞こえた声。

誰かも分からない声。

驚いたようなその声は、恐怖に陥った私の心を、とても軽くした。

もしかして、薪くん?



「しんっ…くん?」

「おいてめぇ、なにしてんだよ!」

「はぁ、紅のおでましかよ…」



涙でボヤけて見えない視界。

鼻にツンとくる鉄の匂いに、殴り合いの音…

私はゆっくりと意識を手放した。
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