水と油の私達
「触らないでっ!」

「由乃ちゃん…」

「触らないでっ…やだ…恐い…触らないでっ…」



きっと、ここにいるってことは、薪くんが助けてくれたんだろう。

それなのに私は、なにを言ってるんだろうか…

最低だ…



「っ…由乃ちゃん…」



優しく、ゆっくりとした薪くんの声。

私が触れないでと言ったせいか絶対に触れてこない手。




「なに、された…?」



震えていた。

薪くんの声は、これまで聞いた彼の声の中で一番震えていた。

なに…思い出したくもない…

言葉にしてしまったら、本当に汚れてしまう気がして…



「言いたく、ない…」

「由乃ちゃん…」

「…キス、された…深いの…舌が入ってきて…」

「っ…やっぱ、もういいっ…」



顔を背ける薪くん。

ああ、私やっぱり、




「汚い…?」
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