秘密の出産だったはずなのに救命医の彼に見つけられてしまいました

プロローグ

「待ちなさい! 紗良(さら)

「いやー」

少しやんちゃな娘は今日も元気いっぱいに走り出す。
3歳になる紗良は外遊びが大好き。保育園からの帰り道、私の手をさっと振り解き公園へ一直線に向かってしまった。
私たちの住むアパートに帰るにはこの道を通らないとかなりの遠回りになる。保育園からの帰りで疲れているとついこの道を使うが、半分くらいの確率で公園へと連れ込まれてしまう。

はぁ……今日は連れ込まれたか。
残念。
紗良は滑り台を何度かすると大抵満足してくれるので私もしぶしぶ公園へ向かった。

「ママーっ!」

滑り台の上から手を振る紗良は柔らかな髪の毛をふたつに結びえくぼを見せ笑っていた。
この顔を見るとつい私まで表情が緩む。

「はーい。気をつけて滑っておいで」

「はーい」

紗良の元気な声が聞こえ、滑り台を何往復もし始めた。
私は仕事のバッグ、保育園の荷物、先ほどスーパーに寄って買ったものをベンチに置くと一息ついた。
紗良の姿を目で追っていると、今日は何故かブランコへ向かってしまった。

あれ?
紗良ってブランコ乗れたっけ?

疲れた頭がなかなか回転しない。
そして私の足は一歩遅れてしまった。
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