再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
「ねぇ、最近生理きた?」

伺うように小さな声で未来に尋ねられ、ビクッとした。
生理?
いつが最後だった?
焦って思い出そうとするが分からない。
もともと夜勤をするようになってから乱れがちだったが2ヶ月くらいきていないかもしれない。
5月の上旬に来たかもしれない。
今は7月終わり。だとすると2ヶ月以上来ていないことになる。

「優里?」

私の頭にも未来と同じ考えであろうことが浮かんできた。
私はようやく立ち上がるとトイレから出た。
未来の心配そうな顔が不安な気持ちを和らげてくれる。

「5月のゴールデンウィークのあたりで生理があった、かも」

ようやく伝えると未来は頷いた。

「検査してみようか。まだドラッグストア開いてるし買ってくるよ」

私も小さく頷いた。
すると未来は私の手をそっと握りしめてくれたあと、バッグを持ち玄関を出ていった。

20分くらい経っただろうか。
玄関の開く音がして未来はビニール袋を手にしていた。

「ただいま」

「お帰りなさい」

未来は袋から取り出した小箱を私の手に乗せた。

「行っておいで」

優しい声かけに胸の奥が熱くなる。
私は小箱を手にトイレへ入る。
説明を読みキットを試してみるとすぐに小窓に線が入る。もう一つの窓にも線がある。
検査がきちんと出来たことを示すコントロールの線が間違いないことを示している。
もちろん100%じゃないのかもしれないが、かなりの精度だろう。
トイレを出ると未来にキットを見せた。

「これって……。妊娠してる! 優里、おめでとう」

未来は笑顔になり、私の手を取るとぶんぶんと振ってきた。

「ありがとう」

なんだかくすぐったいような、胸の奥が温かくなるような、なんとも言えない気持ちが胸いっぱいになった。

「斗真にいわないと!」

未来に促され、私は斗真に電話をかけたがいつものように繋がらない。夜とはいえ医師になった以上繋がらないことの方が多い。メッセージに、折り返しの連絡を待ってると入れた。メッセージを入れる時も、嬉しさやドキドキが止まらず手が震えた。

「未来がいてくれて良かった」

「優里ー!」

未来は私に抱きついてくると、ぐすっと鼻を啜る音が聞こえてきた。

「すごく、すごく嬉しいの。優里に赤ちゃんができるなんて……」

段々と声が掠れてきて涙声に変わった。

「未来に言われるまでそんな可能性を考えても見なかった。ありがとね」

私もぎゅっと未来を抱きしめたい。

「早く斗真の反応を知りたいね! 絶対いいパパになるよね」

未来に言われると、将来の斗真の姿がくっきりと目の前に思い浮かぶ。
私は頷くと笑顔になった。
早く斗真に知らせたいな、と胸を躍らせていた。
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