再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
翌朝になっても斗真からの連絡はなかった。
忙しいのか既読にもなっていない。
仕事柄仕方ないと思い、私は未来に付き添ってもらい昨日のうちに調べた産婦人科を受診した。
産婦人科の中はみんなお腹の大きな人ばかりで、ニコニコと幸せそう。
私たちまで笑顔になってしまう。
お腹の大きな人に目を奪われて、無言になっていると診察室から呼ばれた。

「武藤優里さん」

「はい」

未来に待合室で待っていてもらうと診察室へ入った。
内診台に案内され、初めての経験にビクビクしながら診察を受けた。

「武藤さん、見えますか? もう心拍の確認もできますね」

映し出されたモニターに豆のようなものが写っており、その中でピクピクしているのが私にも確認できた。
生きてる……そんな生命力の強さを見せられた気がした。
内診台を下り、診察室へ案内されると先ほどのエコー写真を渡された。

「すでに10週に入っていますね。失礼ですが未婚でいらっしゃいますね」

医師が探るように声をかけてきた。
未婚である限り産むとは限らないのだろう。

「産みます。結婚の約束をしている彼もいます」

「そうですか。おめでとうございます」

ホッとしような表情を浮かべ、ここで初めて【おめでとうございます】と言われたことに気がついた。

「ありがとうございます」

「つわりが出ているようですね。今がピークだと思います。食べられなければ食べなくてもいいし、無理のないようにしてくださいね。もう母子手帳をもらって大丈夫ですので次回は持ってきてくださいね」

「ありがとうございました」

3枚のエコー写真を受け取ると診察室をあとにした。
未来はウズウズした顔で私が出てくるのを待ち構えていた。
私の手にあるエコー写真を見せた。

「あ、あ、あ……」

声にならないほどに驚いている未来の姿は微笑ましいくらいに可愛くて、私に胸の底から喜びを与えてくれた。

「うん! 赤ちゃんいたよ」

「良かった、良かったね!」

エコーの写真を見て涙する未来は泣き笑い顔で何度も、良かったねと繰り返し言ってくれた。
その顔に私まで涙してしまい、待合室でふたりで泣いてしまった。
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