再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています

月夜の晩に

朝から晩まで家事や紗良の支度で毎日が戦争。
ひとりでご飯を食べられる今は幾分楽だが、それでも手はかかる。
週末になると疲れがどっと出てしまうが紗良はお構いなし。
今日も朝から公園に行こう、と言われてしまった。
平日ゆっくり遊んであげられないので出来る限り、と思うがこのところ仕事での疲れも溜まっていて体がだるい。
でも子育ては待ってくれない。
家事を済ませると,リュックに水筒や着替え、お菓子を詰め込んだ。
靴を履き、いつもの公園まで着くとベンチに座りこんでしまった。
暑いからかもしれない、と冷たいものを飲むがだるさは一向にとれない。
紗良はひとりで滑り台を滑ったり砂場をしてくれているから助かった。
私は目を離さないように気をつけながら見ていたが、飽きてしまったのかボール遊びをせがまれてしまった。
重い体を引きずるようにボール遊びをしていたがそろそろ限界。

「ごめん、紗良。今日は帰ろう」

けれど紗良はまだ物足りない。
まだ遊びたいと駄々をこね始めてしまった。
困り果てていると、後ろから声をかけられた。

「紗良ちゃん! 俺とやろう」

え?
振り返ると斗真が立っていた。
私の手からボールを取ると、紗良の手を引き広場の真ん中へ出ていった。
何も言えず、私はふらっとベンチに座り込んだ。
斗真は紗良とボール投げをしたり、サッカーの真似事をしたりして過ごしていたがしばらくすると疲れたのかふたりがベンチに戻ってきた。

「ありがとう」

斗真にお礼を言うと、彼は私のおでこを触ってきた。

「熱はなさそうだな。夏バテか?」

「うん。疲れが溜まってたのかもしれない。ごめんね、付き合わせて」

「いや。紗良ちゃんと遊びたくて来たんだ」

斗真の顔は汗ばんでいてたくさん相手をしてくれたのが分かる。今日はこの前と違い、学生の頃のようにTシャツとデニムにスニーカーの姿だった。

「お昼食べに行かないか? 作るの大変だろう?」

私の体調を伺うように尋ねてくれた。
正直なところ家に帰ってもやる気は起こらない。そもそも私は食べたいとも思わないので何か買って帰ろうかと思っていた。

「大丈夫。コンビニに寄って帰るから。遊んでくれてありがとう」

「なら一緒にコンビニで買って俺もお邪魔させてもらう。優里は休んだほうがいい。少しの間紗良ちゃんを見ていてあげるから」

「ううん。大丈夫だから」

「優里の大丈夫は大丈夫じゃない」

斗真に言い切られてしまう。
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