秘密の出産だったはずなのに救命医の彼に見つけられてしまいました
どれだけ彼女が心細かったかと思うと情けなくも涙がこぼれ落ちそうになった。
いつも俺を支えてくれていた彼女が助けて欲しい時に俺は助けられなかったのだと理解した。
悔しくて情けなくて、その日の勤務は動揺してしまった。
彼女は逃げ帰るように病院を後にしたが、翌日消毒に来る様に伝えたからまた来るはず。
その時間には俺の当直のバイトは終わっているはず。
そのまま俺は病院で待ち伏せして彼女と話そうと決意した。
けれど彼女は俺を避ける様子で愕然とした。
もちろん元の関係に戻れるなんて思っていなかったが、拒絶されると考えていなかった自分の浅はかな考えに反省した。
情けないが紗良ちゃんにとりなしてもらい、なんとか話をするが優里の姿は頑なだ。
子供も俺の子ではないと言う。
どう考えても俺の子だろう。むしろ彼女の誕生日の日に関係を持った、あの時にできたのではないかと分かるくらいだ。
でも彼女はもう終わってると何度も繰り返し言ってきた。
俺は終わってない、終わらせたくない。
あの時の気持ちは変わっていない。
今だって彼女を見ているだけで胸の奥が熱くなる。今までただがむしゃらに働いてきたが、ようやく血が通ってきたように感じた。
もう一度彼女の信用を得たい。
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