再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
「どうぞ」

私は斗真を部屋に案内した。
妊娠した時に引っ越してから変わらないこの部屋は2DKで広さは十分。その代わりとても古い。子供が生まれるから、と広さや公園からの距離などを重視した。陽当たりもいいし気に入っているが、古いので斗真に見せるのが恥ずかしかった。

「お邪魔します」

背の高い斗真がいるだけで部屋の中が狭く感じる。
紗良がお姉さんのように洗面所を案内し、斗真と手洗いをしていた。
リビングのテーブルにコンビニで買ったものを出し、3人分の麦茶を入れた。
ご飯を食べようとするが私はやはり食欲が湧かない。
その姿を見かねて斗真に横になるように言われた。

「紗良ちゃん、ママが寝てる間先生と遊べるよな?」

「いいよー」

紗良の気安い声を聞き、斗真は私を隣の部屋へと促した。

「困ったら声をかけるから優里は一度横になって」

さっと私の頭を撫でると、仕切っている扉をそっと閉めた。
私はブランケットと枕だけ取り出すと横になった。
隣の部屋からは紗良の楽しそうな声が聞こえてくる。何度も聞き返す斗真の声を聞きながら、どこか安心感に包まれ眠ってしまった。
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