再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています

会いたい

斗真が来てからというもの紗良は保育園から帰ってくると画用紙を見て「とーま、とーま」と言う。いつのまにか【先生】ではなく【斗真】になってしまった。この前ふたりで描いた絵を何度も見返している紗良を見ると複雑だ。
斗真はまた来ると言っていたが、いつ来るのかなんて分からない。それにこのまま流されていいのか中途半端な気持ちでいっぱいだ。
どうしたらいいのかなんて分からない。
今も斗真の連絡先は変わっていないのかもしれない。けれどスマホの番号を変えた時に未練が残らないよう彼の連絡先は消去した。だから私からは連絡も取れないし、私の連絡先も知らないはず。
もやもやした気持ちが処理しきれず、私は紗良が寝静まったあと未来にメッセージを送った。

【斗真に会っちゃった。偶然だったけど紗良がいることも知られたの。またよりを戻したいと言われたけどどうしたらいいんだろう】

今日は休みなのか、仕事が終わったのかすぐに既読がつくとスマホが鳴った。

『優里! 斗真に会ったの?』

「うん。紗良が怪我をしちゃって、病院に行ったの。そこで救急外来のバイトに来ていたみたい」

『紗良ちゃん大丈夫なの?』

斗真に出会ったよりも紗良の心配をしてくれる未来にちょっと気が緩んだ。

「うん。おでこを切ったけど縫ったから今はキレイ」

『そっかぁ。よかったね。子供に怪我はつきものっていうしね』

「うん」

『斗真と会って、それでおしまい?』

その続きがあるってわかってて言ってる。よりを戻したいと言われるまでの流れを聞きたいのだろう。

「斗真に会ったけどよりを戻すつもりはないって伝えたの。私にはもう子供もいるし、昔と変わってしまったから。それでもまた斗真は来て……」

『優里のことが好きだと言ったのね』

「そこまでは言ってない……」

『なら、何て言ったの?』

未来は急かすように聞いてきた。
私は顔が火照ってきてしまった。

「うん。忘れられなかったって」

『そっか。で、紗良ちゃんのことは何か言われた?』

「自分の子じゃないのか、って。だからあの時消えたのかって聞かれた」

『そっか。それで優里は何て答えたの?』

「違うって言った。紗良は私の子だって伝えた」

未来に質問され、私の中でも斗真との話が思い出され整理されていく。
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