囚われのシンデレラーafter storyー
"ヨシタカは、遠距離恋愛だからいいだろう。会えない代わりだ"
しどろもどろになる私に被せるように、そこにいた別の男性が答えていた。
"それにしても、そんなに飾りたくなるほど可愛いいんだな"
"……ああ、可愛い。だから選べない"
いつもは冷厳さでガードされているその顔が、ほんのわずかに緩む。
そんな表情を見せられれば、自分のことを言われている訳でもないのに、勝手に鼓動が激しくなる。
"ヨシタカをそんなに腑抜けにする可愛い恋人の写真は、スマホに入っていないのか? 見せてくれてもいいだろう"
その言葉に、ドキリとした。
アズサという女性――。
見たいような見たくないような。振り子のように忙しなく揺れ動く。
"それはできない"
"どうしてだ? 減るもんじゃない"
"減るような気がする。スマホに収めている写真はどれも、俺だけに見せる素の顔ばかりだから、他の人には見せられない。俺だけの特別なものだ"
そこにはいないのに、まるでそこにいるかのように愛おしげに言う。
痛みと嫉妬が入り混じる。
でも、こんなことで傷付いてばかりもいられない。まだ、始まったばかりだ。最高の笑顔を作る。
"そうですよね。大切なものほど隠しておきたいものです。その方が女性としても嬉しいと思います"
笑顔の裏で、痛みは増すばかりだ。
"――ヨシタカは、日本人らしくないな。ストレートに恋人に愛情を示す"
"あなたたちほどではない。フランスは愛の国だからな。パリジャンは呼吸をするように愛の言葉を口にする"
"まあ……そうだな。ハハハ!"
終始和やかな会話に、つい目を伏せてしまった。
"アリサは美しいから、パリジャンには気を付けろよ? 情熱的で手が早い。うちの部内にも、もう君を狙っている男がいるかもしれない"
セクションマネージャーがそう口にした。
"私は、今は仕事のことで頭が一杯ですから。恋愛のことなんて考えられませんよ"
"おお、アリサはやっぱり真面目だな。なあ、ヨシタカ"
西園寺さんの目がこちらに向けられる。その目のあまりの冷たさに、自分の表情が硬まるのが分かる。
"せっかく派遣されて来た有能な人材を失いたくはないからな。オフィスではぜひ、その真面目さを貫いてほしい"
その冷たい眼差しが、ひんやりとした微笑みを作って。
"でも、仕事を離れたら、情熱的なパリジャンと恋愛を楽しむのも良いのでは? 君に似合いそうだ"
ゾッとするほどに温度の低い笑。
この表情から完全に笑顔なんて消えてしまう。
なのに。
その美しささえ感じる冷たい微笑みが、私を捕らえて離さない。