囚われのシンデレラーafter storyー
こんなに、惨めでたまらないのに。
どうして私がこんな気持ちにならなければいけないの――?
簡単だ。こんなこと、止めてしまえばいい。
ただそれだけなのに――。
心がまるで、言うことを聞かない。
グループの歓談が終わり、私は他の人につかまっていた。
その人を上手くかわし周囲を見回すと、西園寺さんが一人で窓際に並べられていた椅子に座っている姿を見つける。
脚を組み、窓の向こうを見ていた。心臓がドクドクと騒ぎ出す。少しの躊躇いの後、そこへと足を向けた。
"――西園寺さん、今度の国際会議のことですが"
隣に腰掛ける。
”うちのホテルは関われそうなんですか?”
仕事の話でしか、きっと私を見てはくれないから。今はそれに徹する。
周囲には、皆の楽しむ声で溢れているのに。
この場だけは、違う世界みたいに、自分の心臓の音ばかりが聞こえる。
窓の方に向けられていたその横顔が、こちらへとゆっくりと向く。
一際、大きく胸が跳ねた。
いつもより近い距離。西園寺さんの隣に座るなんて、こんな機会でないと無理だ。
”パリは、国際会議開催都市ランキングで常にトップ。その分、実績あるホテルも多いしライバルも多い。うちが食い込めるでしょうか”
この年齢になって、男の人に話しをするのに声が震えそうになるほど緊張したことなんてない。
”――簡単ではないからこそ、価値がある。特に今度の会議は政府主催だ。うちを売り込めれば、次に繋がる。政府や、パリ市にパイプを作れるからな。うちに足りないのはそれだ”
長い脚に、引き締まって逞しさのある腕。それに、男の人らしい骨の筋がある手は、長くて綺麗な指を持つ――。
至近距離にあるその身体に、どうしようもなくドキドキする。
その身体に触れることが出来たら――。
無意識のうちに手を伸ばしてしまいそうになって、慌てて引っ込める。
手を伸ばせばすぐに触れられる場所にいるのに。胸が苦しく締め付けられる。
せめて、時間が止まればいい。
このまま二人だけで。
”――君たちの働きにかかっている”
なのに、呆気なく西園寺さんは立ち上がった。
”気を引き締めて取り掛かってくれ。この仕事は絶対に決めたい。今日はお疲れ様”
そう言葉を残すと、私の続きの言葉を聞くまでもなく背を向けて立ち去った。
その背中をただ見つめる。セクションマネージャーや他の人に何かを告げると、その身体は店を出て行った。