囚われのシンデレラーafter storyー
”――西園寺さんは、もう帰ったの?”
近くにいたアベルに、力なく問い掛けた。
まだ夜の九時だ。周囲の人たちを見ても、まだ誰も帰宅する気配はない。
”ああ、アリサ。そうだよ。今日は、この後、自宅で約束があるって言っていた。でも、一応、会の締めの言葉はあったし、後は自由だ。問題ないだろう?”
”自宅で約束って、こんな時間から……”
どういうこと?
彼女は、日本にいるんでしょう――?
”ああ、それは多分、彼女とのテレビ電話。スカイプじゃない? 時間を決めて約束しているんだと思うよ。週末の楽しみだって言っていたから”
何もこの日に、時間を決めなくてもいいじゃない。
ここにいる、近くにいる私は、テレビ電話に負けるの?
そんなの明日でも何時でもいいじゃない――!
無意識のうちに唇を噛みしめる。
アズサって、誰よ。
一体、どれだけの女だっていうのよ――。
あの人を、身体も心も独占できるその女が。
見たこともないその女が、死ぬほど羨ましくて仕方がない。
誰かに妬まれたことは何度あっても、誰かを妬んだことなんて一度もなくて。
湧きあがる醜い感情に、心が焼き殺されそうになる。
遠距離恋愛中に浮気された時も、ただ虚しさだけで悔しさなんてなかった。そんな男、必要ないと思えた。一気に心は冷めた。
なのに、どうして――?
この日から、私は、自分の得体の知れない感情と現実とに苦しめられて行くことになる。